双子

実は僕らは双子である。
そのためというのはなんだけど、小学校5年生から、現在にいたるまで双子研究に参加しているのである。双子というのは「環境」に依存する形質なのか「遺伝」に依存する形質なのかを判断する材料にうってつけ!!なのだ。


実験材料になるの?!と眉をひそめる人もいるけれど、まぁ僕たちでよければデータを提供しますよというのがスタンスだ。


プロジェクトでは血液サンプルとか、歯型、写真、脳波測定などいろいろ。こういう研究にも予算がついてくるとだんだんおいしいバイトくらいにしか考えなくなってくる。というか、あまり深く考えないのが僕のいいところでもある。

今回は、中高の先生のツテで「カフェDEサイエンス」というイベントのゲストに招かれた。要はカフェで一般人向けに科学者のやってることをシェアするというもの。どんなことになるのかは、場の流れ次第。


僕らは簡単なアンケートに答え(このアンケートはあまり僕ら双子を特徴付けるのには役立たなかった)、あとは司会者や先生と話をしながら進めていくのである。よくある「双子にはテレパシーがあるのか」とか「じゃんけんしたら、勝負がつかないんじゃないか」なんて本気で質問してくれる人がいてじゃんけんをしてみせるハメに。苦笑。


そういうのは「疑似科学であり、テレビで視聴率をとるために捻じ曲げているものです」と双子のもう片方がばっさり。以心伝心はありますか?との問いも「日常生活のコンテクストで見分けられることがあるのは当然」と答えておいた。確かに、双子というのはDNAが同じなのに別の人が育つという意味で面白いが、中身は別人である。
特に、僕ら双子は干渉をしてこないで育ったので独自に育ったと言っていい。いつ頃から二人の「分化」が始まったかというと、やはり中学かな。部活が違うしクラスも違う。小学校のときもクラスは別だし、部活も違ったけれど、思春期などを通して別の環境にいることが二人の分化に大きな影響を与えたといっていい。


面白かったのは、双子は片方が左利きである確率が高いのでは?という質問。僕もそう思っていたら、先生が「統計をとってみますと、平均して左利きの現れる確率は7%。双子で片方が左利きなのは14%」おー、やはり双子は二倍?と思う。「でもね、これは当たり前なんです。双子は"二人で14%"なわけです。つまり、一人一人でみれば7%ずつ」というお答え。14%というと意外と高い確率に見えるよね。でも、それは双子を1人と見てしまうために起こる現象だということ。


カフェでの話は、いろいろなところに飛ぶのだがまとめてみると、僕ら双子は「双子の相似性」という一般的な見解を打ち破る意味でいいサンプルであった。あと、僕は父親の形質を受け継ぎ、向こうは母親の形質を受けついだというの共通の見解。最初は同じ個体だったとしても、子宮内の位置とか、何をみるのかとか、経験はそれぞれ違ってくるもの。


帰ってきたら、母が「オレンジのシャツを着ているのが(いつもオレンジは僕の色)二人帰ってきたから、ヒトシが二人帰ってきたと思った」と述懐。「人の認識って言うのは、思ったよりずーっと大雑把なんだよね。背格好、色、髪型くらいでしか判断してないんだ。それが双子を同一視してしまうそもそもの原因なんだ」とのお答え。


余談だが、僕は左利き(はし・鉛筆のみ)でもう一人は右利き。僕自身は、生まれつきは右利きだと思うのだけど、左で書くものを練習していたから左利きで生活することが普通。これも、脳の発達に大きな影響を与えているかもしれない。